難波不動産鑑定

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2020年不動産市場の予測

- 消費税増税が不動産市場に与える影響について -

 2019年10月に消費税が8%から10%に増税されたが、不動産市場においては、増税前の駆け込み需要は、過去の1997年、2014年増税時ほど見受けられなかった。1997年も2014年も駆け込み需要が顕著で、翌年には反動減が起こった。
 今回、駆け込み需要が大きく表れない理由として2つ考えられる。
 一つ目は、政府の対応策の効果である。今回、政府は住宅ローン控除を毎年最大40万円で10年間認めていたものを3年延長して13年にした他、住まい給付金の利用者の収入額の上限を増税前510万円から増税後775万円に引き上げ、給付金も増税前は収入額425万円以下で30万円から増税後は収入450万円以下で50万円と拡充した。更に親や祖父母から住宅取得資金として贈与を受けた場合の非課税枠の拡充(但し、適用期間有)や、次世代住宅ポイント制度(新築最大35万円、リフォーム最大30万円相当のポイント付与)等の新設などで、増税後も購入者にメリットを与えた。
 二つ目は、不動産価格が地価・建築費の高騰を反映してエンドユーザーに手の届かない価格帯になっていることが考えられる。
 新築分譲マンションの平均価格を勤労者世帯年間収入平均で除して、年収倍率を算出したところ、首都圏では1995年の年収倍率4.8倍に対し、2017年は7.2倍、近畿圏では1995年4.4倍に対し、2017年は5.4倍となっている。首都圏では1995年の年収856万円、不動産価格4,148万円、2017年の年収818万円、不動産価格5,908万円、近畿圏では1995年の年収782万円、不動産価格3,447万円、2017年の年収713万円、不動産価格3,836万円で、年収は首都圏、近畿圏とも2017年の方が下がっているのに、不動産価格は1995年より上昇している。
 なお、直近の分譲マンションの価格は2017年より更に上昇しており、株式会社不動産経済研究所調査によると、首都圏の2019年(1-10月)の平均価格は6,089万円、平均面積67.44㎡、分譲単価903千円/㎡、近畿圏では同期間の平均価格3,809万円、平均面積56.17㎡、分譲単価678千円/㎡で、首都圏の2019年10月の初月販売率は42.6%、近畿圏では73.8%であった。
 近畿圏の分譲マンションの分譲単価は、平成初期のバブル期を超えており、マイホームを求める人にとっては、政策が手厚くとも、上昇を続ける不動産価格では、手が届かないのが現状であると考えられる。

大阪市商業地の地価

 梅田、淀屋橋、新大阪オフィスゾーンの3地区のいずれも空室率が1%~2%台と非常にタイトで、オフィス市場は活況を呈している。
 直近5年間のオフィス市場を分析すると、大阪ビジネス地区では大型新築オフィスの竣工が少なく、供給がない中で、建替ビルからの借り換え、若しくは増床目的による需要増により、入居率は上昇していた。
 また、大阪中心部の商業地の地価上昇が顕著になってきたが、大阪中心部の地価を牽引しているのはオフィス需要ではなく、都心型マンション、インバウンド増によるホテル用不動産の他、賃貸稼働中の収益用不動産の需要であった。
 2017年以降、大阪ビジネスゾーンのオフィス賃貸市場は、空室率が低下し、賃料も上昇と好調である。
 理由としては、新規のオフィス供給が少ないという点が挙げられるが、既存のオフィス床が減少したことも大きな要因である。
 下表は三鬼商事(株)「MIKIオフィスレポート2019」のオフィス地区別貸室面積(単位:坪)を2015年と2018年を比較したものであるが、「大阪ビジネス地区」全体では若干増で「梅田地区」「心斎橋・難波地区」が+2.1%、+8.7%(「なんばスカイオ」開業)と貸室床面積の増加が見られるものの、他地区は減少しており、特に「淀屋橋-本町地区」の減少が△3%台と大きい。

2015年(坪) 2018年(坪) 増減率(%)
大阪ビジネス地区 2,201,143 2,201,499 ±0
梅田地区 742,651 758,570 +2.1
南森町地区 111,922 110,979 △0.8
淀屋橋-本町地区 699,057 677,035 △3.2
船場地区 330,712 329,948 △0.2
心斎橋・難波地区 103,494 112,508 +8.7
新大阪地区 213,307 212,450 △0.4

 このように、好況感から企業のオフィス需要が回復しているにも関わらず、既存のオフィス床は減少し、需給ミスマッチが2017年頃から顕著になり、また、オフィス需要は梅田ゾーンに一極集中していることから大阪ビジネスゾーンの平均入居率、平均賃料を押し上げた。
 現在、大阪ビジネス地区は、梅田ゾーンに一極集中していたが、オフィス床の不足から淀屋橋、新大阪等の他のオフィスゾーンにまで需要は拡大している。
 今後の新規供給としては、2020年に「オービック御堂筋ビル」(延床面積5.5万㎡)がオープンする程度である。その後は、2022年春に阪神百貨店建替後の「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」(延床面積26万㎡)、2024年春に大阪中央郵便局跡地「梅田3丁目計画」(延床面積22.7万㎡)、「うめきた2期・北街区」(延床面積14.7万㎡)、2026年春に「うめきた2期・南街区」(延床面積約37.5万㎡)の供給が予定されている。
 需要が集中する梅田ゾーンでは2022年まで大型供給が存しないことから、リーマンショックのような大きな外部要因による景気後退がない限り、大阪オフィス市場は高い入居率で推移し、賃料についても上昇基調が継続すると予測する。
 商業地の地価は賃料が上昇することで、投資利回りが改善することから、高値で安定すると考えられるが、外国人投資家の投資が集中し、地価が高騰していたある地域では、本国の不景気を反映した資金調達難から、地価が反転下落しており、外的要因による不安材料も無視できない状況にある。

住宅地の地価

 2018年の大阪北部地震、台風による被害、2019年でも広域自然災害が生じ、日本では毎年のように自然災害による被害を被っている。
 近畿においては、南海トラフによる地震、浸水リスクのある地域については、マイホームを求めるエンドユーザーは慎重に選別する傾向があったが、近年の台風等の災害経験から更に、浸水のみならず、土砂災害や交通・インフラの復旧の速度といったリスクの有無について注視し始めている。
 ここ数年の地価は、都市部に人口が流入し、地価が上昇する反面、郊外型ニュータウンや村落からは人口流出し、地価が下落するという二極化傾向が続行していたが、災害リスクという観点からも利便性の優れた立地に需要が集中している。
 利便性の優れた地域は複数の交通網があることが多く、災害で一つの交通機関がストップしても、代替交通手段があるため、災害時においても安心に連がる。
 反対に、都心に向かう交通手段に選択肢がないエリアは、地価は横ばい若しくは下落傾向にある。これは、一昨年の台風被害で、交通網のマヒ、停電の長期化を経験したことにより、都心への転出が加速したことが要因となっている。
 また、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)のエリアでは、需要の減退が著しいが、イエローゾーンでなくても、住宅地の背後すぐに崖地、若しくは山林がある場合も忌避される傾向にあり、立地条件の選別も厳しくなっている。
 こうした需要の選択肢も地価に影響を与える大きな要因となりつつある。
 従って、今後のまちづくりのキーワードとしては、「物理的に災害に強い」だけでは足らず、「災害にあっても復旧が早く、日常生活を取り戻せる街」でなければならない。

住宅賃料

 賃料調査結果では、供給量の多い「1K-1KDK」の賃料はほぼ横ばい基調になり、「2K-2LDK」「3K-3LDK」の賃料上昇が継続しているが、新築分譲マンションの賃貸物件が多く、ファミリータイプも投資目的の対象となっている。
 また、「1K-1LDK」の占有面積の小振化に歯止めがかかり、総額賃料が上昇しても需要がついてきている状況になりつつある。
 国土交通省「平成30年度 住宅市場動向調査」(平成31年3月)によると、民営借家に住む世帯主の平均年齢は、首都圏39.2歳、中京圏37.7歳、近畿圏39.8歳で、各圏とも大きな年齢格差はない。
 年収は首都圏530万円、中京圏506万円、近畿圏453万円で、近畿圏が低い。
 但し、平成29年度調査結果の平均年収と比較すると、首都圏+8.8%、中京圏+5.2%、近畿圏+15.3%と近畿圏が最も上昇している。
 「支払家賃 + 共益費」でみると、首都圏が88,868円、中京圏67,054円、近畿圏74,791円で、近畿圏は中京圏より支払コストは高い。
 また、平成29年度調査結果と比較すると、首都圏は+2.6%、中京圏は+1.3%、近畿圏は+8.6%と「支払家賃 + 共益費」の上昇率は近畿圏が最も高くなっている。
 更に勤務先からの住宅手当があるのは首都圏26.8%、中京圏27.0%、近畿圏23.9%と中京圏は手厚いが、平成29年度調査結果と比較すると、中京圏は約3ポイント減に対し、首都圏8ポイント、近畿圏5ポイント上昇している。
 勤務先からの住宅手当は、首都圏月38,857円、中京圏月28,567円、近畿圏月34,411円で、首都圏は対前年比+15.2%、近畿圏+26.4%上昇したが、中京圏は△12.2%減少している。
 世帯主の職業では三大都市圏とも「会社員・団体職員」の占める割合が最も高い(首都圏53.0%、中京圏40.4%、近畿圏37.1%)。
 次に多いのは「会社・団体役員」で、首都圏15.8%、中京圏22.5%、近畿圏24.5%である。
 家賃の負担感については、負担感がある(「非常に負担感がある」「少し負担感がある」の合計)割合は、首都圏54.4%、中京圏51.7%、近畿圏は57.8%で近畿圏が最も高いものの、対前年比では首都圏10.0ポイント、中京圏0.7ポイント、近畿圏11.1ポイント減少している。
 以上の調査結果から、景気の拡大により企業の人手不足が深刻になり、雇用を拡大するために、賃金や住宅手当等の福利厚生を改善したものと思料される。
 このため、家賃等が上昇しているにも関わらず、入居者の家賃の負担感が低下している。
 景気の好況感が2020年も継続するならば、賃料の上昇に需要はキャッチアップできるため、新規住宅賃料は値崩れすることはなく、堅調に推移していくものと予測した。

分譲マンション価格

 三都市比較でも分析したように、専有面積の小振化が加速している。
 2019年(1~10月)の平均で、大阪市44.98㎡、神戸市57.55㎡、京都市51.71㎡である。
 大阪市で供給が集中する都心6区の平均面積をみると、タワーマンションの供給の多い中央区(59.20㎡)、北区(67.40㎡)では、億ション販売もあるため、平均面積は大阪市平均より広いが、福島区45.50㎡、天王寺区42.00㎡、西区35.60㎡、浪速区26.20㎡と、圧倒的に1ルームマンション(投資向)の供給に偏っている。
 神戸市も同様で、神戸市の供給1,016戸の内、その約65%を供給している中央区の平均面積は48.80㎡で、1ルームマンションの供給が多い。
 京都市では、中京区、下京区のかつてはマンション供給の多かった両区では、ホテル需要との競合により、マンション供給は激減しており、京都市738戸の内、上京区29戸、中京区20戸、下京区102戸にすぎない。2019年では左京区51戸供給で、平均面積30.70㎡、南区252戸供給で、平均面積31.60㎡と、周辺区での投資向け1ルームマンションの供給が増加している。
 即ち、マンションディベロッパーは、投資向け分譲マンションに注力し、マイホームを必要とするエンドユーザー向けの供給が凋んでいる。
 反面、中古マンションの成約件数は増加しており、平均価格は下図のとおり、上昇の一途であるが、平均面積は2014年の69㎡台から縮小傾向にある。
 新築分譲マンション市場では、地価・建築費の高騰により、分譲価格が高くならざるを得ないこと、低金利により投資需要が活発であることから、販売タイプを投資用1ルームにして、総額を抑えて販売しており、2008年のリーマンショック直前の市場と類似している。リーマンショック前は、リート、ファンドが需要の多くを占めていたが、現在は個人投資家、外国人投資家も多く参入している。
 しかし、通商問題を巡る緊張、中国経済の先行、英国のEU離脱後の行方等、国際金融市場に影響を与える要因は少なくなく、現在の新築分譲マンション市場の傾向は、高いリスクが内在していると言わざるを得ない。