2008年不動産市場の予測
トピック.借地借家法の改正は平成20年1月1日から施行
2007年12月14日衆議院から送付された「借地借家法の一部を改正する法律案」は参議院で可決、成立した。
施行期日 平成20年1月1日。
改正内容「事業用定期借地の存続期間の延長」
① 30年以上50年未満
② 10年以上30年未満の2つのタイプが利用できる。
- 特集 - 中古住宅市場の動向
大阪府、滋賀県、兵庫県(神戸市北区、西宮市)で、郊外型ニュータウン内の中古住宅市場の動向について分析したところ、以下の結果を得た。
平均価格が上昇し、かつ、区間推定値(最大値、最小値)の乖離が狭まっているのが、大阪府和泉市光明台地区と滋賀県大津市仰木地区であるが、売希望価格と成約価格の乖離率は「横ばい」と「拡大」であり、積極的な需要回復まで至っていない。
兵庫県下の藤原台地区と名塩南台地区は、直近2ヶ年で平均価格が下落トレンドにあることは共通しているが、区間推定値(最大値、最小値)の乖離が拡大しているのが名塩南台地区、反対に縮小しているのが藤原台地区である。
但し、売希望価格と成約価格の乖離率は、藤原台は拡大し、名塩南台は縮小している。
両地区とも周辺に郊外型ニュータウンが多く存し、常に競争、代替関係にあることから目立った需要回復が見受けられないが、藤原台地区では、駅徒歩圏内(15分以内)にある事例は、売出価格と成約価格との乖離率が0~5%以内にあるが、徒歩15分超えの立地では乖離率は9~15%に拡大し、同じ藤原台地区でも徒歩圏内外で大きな需要格差を生じていることが判明した。
大阪市商業地の地価
2006年後半から地価調整局面に入っていたが、2007年後半は、特に商業地の市況が一段と悪化している。この理由としては、以下の景気後退要因が掲げられる。
特に商業地の地価の影響としては、① の要因が最も大きい。
アメリカの地価バブルの崩壊は住宅地からリゾート地へ、更には商業用不動産価格にも影響を及ぼしており、証券化市場が急速に冷え込んでいることが商業地の地価に負の要因として働いており、2008年前期までは地価調整局面が続行するものと予測した。
① 米国住宅バブル崩壊に端を発したサブプライム問題で、全世界的に金融不安を生じせしめ、
クレジット市場、株式市場、為替市場に影響を及ぼしたこと。 このため、米欧州では証券化
商品全般についてのリスク再評価が浮上し、不動産投資についての金融引締めが顕著になっ
たこと。
② 原油高により製品価格、サービス価格が上昇したこと。 但し、中小企業は低価格競争のため
原油高をコストに転稼できず、収益が悪化していること。
③ 建築基準法の改正による建築確認許可の長期化に伴い、新設住宅着工戸数は4ヶ月連続で
マイナスを記録したこと。 (2007年10月の新設住宅着工戸数は、前年同月比35%減の76,920戸、
分譲マンション着工戸数は前年同月比△71.1%、分譲戸建住宅着工戸数は前年同月比
△9.5%、持家着工戸数は前年同月比△8%) これに伴い、建設業の2007年11月の倒産件数
が約3割増加する等、関連する業界に悪影響を与えている。
④ 建設業界から始まった「偽装」が食品業界にも及び、消費者の信頼を損ねて購買意欲が減退
していること。
住宅地の地価
堺市をモデルにしたGDPの変動を乗じた理論地価と実勢価格は、接近している。
但し、関西圏全体の住宅地の動向としては「大阪市商業地の地価」で前述した景気後退要因が、以下の影響を与えている。
① 先行不安から、住宅取得の手控え。
② 勤労者世帯可処分所得が伸び悩んでいるにもかかわらず、地価、建築費の上昇により、住宅
価格が上昇していること。
住宅賃料
2007年の総供給戸数とタイプ別供給戸数は、2006年とほぼ似通った数字になっている。
新規賃料は、全般的に上昇したが大阪都心区では供給過剰感があり、中古賃貸住宅の空室率の上昇気配が感じられる。
賃貸供給は、建築基準法改正の影響のみならず、その大量供給の担い手であったJリート、ファンドの手控えから供給調整が進んでおり、2008年の新規賃貸供給量は激減するものと予測される。
新規賃料については、賃料ピーク観も出始めており、一部、新規賃料調整(下方修正)エリアが出てくるものと予測した。
分譲マンション価格
建築基準法改正の影響を受け、供給量は大幅に減少しているが、需要マインドも「住宅地の地価」で前述したように冷え込んでいる。
特に、「新価格」と称してマンション販売価格を一気に上げたエリア程、需要の反動減が顕著である。2008年の分譲マンション市場は「新価格」を訂正、下方修正するエリアが増加するものと予測した。