2009年不動産市場の予測
トピック.ニュータウンの不動産価格の動向
大阪府和泉市、滋賀県大津市、神戸市北区で、郊外型ニュータウン内の土地、中古住宅市場の動向について分析したところ、以下の結果を得た。
3地点に共通しているのは、平均値の下落である。
区間推定値(最大値、最小値)の乖離が狭まっているのは、大阪府和泉市光明台地区と滋賀県大津市仰木地区であるが、兵庫県藤原台地区での中古住宅市場では、反対に拡大している。
藤原台地区の成約事例を時系列にみると、平成20年9月以降、総額2,000万円を割った事例件数が増加傾向にある。
以上、各地域で地価、不動産価格の下落の兆候が窺える結果となった。
大阪市商業地の地価
2007年夏、アメリカ発サブプライム問題は、サブプライムローンの証券化商品の価格下落の損失を被った金融機関の破綻を引き起こし、金融市場の信用を落としめた。
金融市場の低迷、混乱は実体経済に及び、企業収益が悪化するなか株式市場も低迷している。
不動産の価格は全世界的に下落しており、アメリカ住宅価格は、2006年7月のピークから2008年7月調査では約20%の価格下落が報告されている。
また、欧米ではイギリス、スペイン、アイルランド、イタリア、フランス、デンマークの住宅価格の下落が報じられている他、オーストラリアでも「100年に一度の住宅不況」と、住宅価格のバブル崩壊が主要都市で表われてきている。
中国では、不動産投資熱を抑制するため貸出規制を行っていたが、中国大都市で不動産価格が低下し始めたことにより、規制緩和を始めている。
ドバイでの不動産価格下落も報じられており、2008年は全世界的不動産不況に突入した年でもあった。
不動産価格の下落は、消費の低迷にも連動する。
アメリカでは所有する住宅を担保に入れ、その金を消費にあてることもよく行われていたため、不動産価格が下落すれば消費を抑えることになるからである。
2008年12月、トヨタ自動車が世界的な販売不振と円高を背景に1,500億円の赤字を発表したことは、記憶に新しい。
2009年の商業地、住宅地の地価は、下図のような構図であらゆる局面で地価を下押しすることから、地価はその下落率を拡大しつつ、下落が続行していくものと予測した。
住宅地の地価
堺市をモデルにしたGDPの変動を乗じた理論地価と実勢価格は、下落に転じた。
実勢価格の下落率の方が大きいため、両価格はまた乖離し始めている。
関西圏全体の住宅地の動向としては、「大阪市商業地の地価」で前述した景気後退要因により、2008年後半から地価は下落率を強めている。
2009年の住宅地の地価は全般的に下落が続行するが、特に交通、利便性に劣る立地の需要減退が著しく、都心への接近性が劣る立地ほど地価下落率が大きく表われるものと予測した。
住宅賃料
2008年の総供給戸数は、2007年に比すると約△16%の減少である。
新規賃料は、「大阪市」以外は上昇にストップ感が出、「南大阪」は下落に転じている。
「大阪市」の賃貸供給の担い手であったJリート、ファンドの手控えから、2009年は新規賃料が下落するものと予測される。
2009年の賃貸市場は、
① 景気後退による勤労者の家賃負担力の低下
② 企業の家賃補助等の福利厚生費の減額、又は廃止の増加
から需要の賃料負担力の低下が予測され、全般的な地域、タイプで賃料の下落が予測される。
分譲マンション価格
景況感の悪化、雇用不安、賃金の低下等により、勤労者のマイホーム購入意欲は冷えこんでいる。
買い替え層もリフォーム等でしのぎ、買い替えを急がない待ちの姿勢になっている。
2008年では地価は下落し始めており、上昇していた建築費も下落が予想されることから、マンションデベロッパーは今年仕入れた物件の商品化を進める「後入れ先出し」を行うことが予想され、マンション販売価格は下落する。
また、高値のマンション在庫については価格改定を行うことも予想されることから、2009年のマンション価格は全般的に下落するものと予測した。
従来マンション市場では、何でも設備をつけるという満艦飾型で販売していたが、今後は必要なものをユーザーがプラスするというオプション型が主流となると思われる。
但し、オプション型で販売する時は、ユーザーのための住空間をコーディネートするといったソフトがなければ、ただの安売りの箱売りになってしまう。
2009年はソフトの有無で販売力に差をつけ、そこでディベロッパーの明暗が分けられると考える。